経済学の豆知識
- 省エネ家電やエコカーが普及すれば、1台当たりのエネルギー消費が減少しても、普及台数の増加で、かえって総消費量は増加しうるというパラドックス。
- 継続的な業務経験を通じて技能蓄積が図られなければ、労働生産性は向上しない。
- 政府が紙幣を発行すると税金を集めなくてもお金を増やせるため、お金の価値が下がりインフレになる。このため紙幣の発行権を政府ではなく中央銀行に委ねた。
- 中央銀行の役割は「物価の安定」と「最後の貸し手」
- 各国の経済の連動性は、正の相関(相補的)と負の相関(代替的)の両方が存在する。A国の景気が良くなると、B国からA国への輸出が増え、B国の景気も良くなれば、正の相関、一方、A国の製品が世界で売れ、A国の景気がよくなる一方、競合製品を輸出するB国は輸出が振るわず景気が悪化する場合、負の相関となる。国際分業が進めば、連動性は弱まる。しかし工程分業であれば、連動性は高まる。資本移動の自由化は、生産性の高い国に資金が集まるので、生産性の高い国と低い国とは負の相関関係となる。
- 比較優位と絶対優位:投入要素(例えば労働時間)が有限であるとき、タスクAとBに対して絶対優位にある人がタスクAとBの両方をやるのではなく、Aに比較優位のある人がAを、Bに比較優位のある人がBをやることで、全体の生産量を上げることができる。
- 最終製品の付加価値連鎖:企画、開発、設計、部品調達、組み立て、流通、小売、宣伝、サービスのうち、その工程が持つ付加価値には差がある。A国で企画と開発を行い、B国から部品を調達し、C国で製造し、D国で販売する場合、付加価値で見た貿易収支が重要となる。
- 家計収支+企業収支+政府収支=経常収支
- 付加価値ベースの輸出入統計が重要(OECD,WTO)
- 国際貿易の重力モデル:2国間の貿易量は、2国の経済規模に比例し、距離に反比例する。このモデルで、貿易自由化は貿易量を増やすことを実証した。
- 経済は、①経済主体集団のある時点での分布、②個々の経済主体の時系列的変化、③経済主体集団の分布の時系列的変化、の3つを押さえる必要がある。
- 経済の成長には、供給だけではなく需要も重要である。供給側では、労働・資本投入量の増加、労働・資本生産性の向上である。需要側では、需要不足の解消、投資需要、資金需要の増加である。成長論では、供給側に視点が行きやすいが、規制緩和、対外開放、潜在需要を顕在化させる需要拡大政策が重要である。
- 高齢化と成長率: 65歳以上人口が全人口に占める割合(高齢化率)が高いほど、低成長となる。
- 人口減少社会の対策:人口に占める就業者比率の向上、労働生産性の向上、成長分野への労働移動
- 低成長の後の成長モデル:工業化の次は経済のサービス化へ向かう。(例:米国)
- GDPでは資本ストックの減少は計算外。資本ストックの回復だけを投資としてカウントする。→災害復興ではGDPが上昇しやすい。
- サービス業の生産性の計測は難しく、計算方法は各国で異なる。
- GDP成長率では、「年間成長率(前年同期比)」と「平均成長率」の違いに注意。
- 中央銀行が発行する「お札」は借用証書のようなもの
- 時間選好率:現在の100円と1年後の150円を等価とみなす。
- リスク選好率:確実な100円と、賞金250円で当選確率50%のくじを等価とみなす。
- 相対所得仮説:幸福感は、絶対的な所得よりも他人と比較した相対的な所得に依存する。順応仮説:生活水準が向上しても、すぐにそれに慣れてしまい、一時的に上昇した幸福感も元のもとの水準に戻ってしまう。
- 経済分析: ①トップダウン型 モデルを構築して分析する。 → 実証分析が忘れられやすい。②ボトムアップ型 経済観察や統計を元に、法則性を見つける。
- 経済分析の基本は、まずグラフを描いて冷静にながめることから始めること。
- 国民総所得=GDP+海外から得た所得(利子・配当、賃金、投信の分配金)
- 潜在成長率=資本の伸び+労働の伸び+生産性の伸び
- 支払いの時間割引率と受取りの時間割引率の非対象性
- 満足(不満足)が徐々に増加(減少)する系列を選ぶ。習慣化による基準点のシフトが原因。
- 売上高=価格×数量 経済状態が変化すると、まず数量が反応し(先行指標)、その後価格が反応(遅行指標)する。
- 需給ギャップ=GDP-潜在GDP(労働投入と資本投入の関数)
- 持続可能性: 自然資本(天然資源)、人工資本(生産設備等)、人的資本(人口、人間の技能)を減らさず持続させること
- 弱い持続可能性 自然資本、人工資本、人的資本の代替可能性を認める。
- 強い持続可能性 自然資本、人工資本、人的資本の代替可能性を認めない。
- 自然を生産要素として利用する場合は、自然の再生可能な範囲内に、自然を排出の場として利用する場合は、自然の浄化能力の範囲内に利用を制限する。
- ヒト、モノ、カネの経営資源が収益性の高い大都市に集まる=経済成長
- 景気が良くなると大都市に人が集まる。
- CPIでは、価格が不変でも性能が向上すれば、値下がりしたと解釈する。性能あたりの価格を見る。
- 消費者実感では、購入頻度の高いものの価格変化が意識されやすい。Ex.食料品と家電製品
- 中央銀行の役割 物価と失業率。資産価格は対象外。流動性が枯渇したら流動性供給を行う。
- 物価の安定は、低金利の維持を期待させ、過剰流動性を生む。
- 低金利で住宅ローン、自動車ローンなどの借入増加が消費を押し上げ。
- 経済学:①帰納的アプローチ 統計データの分析で法則性を抽出、ネットで統計データを収集、表計算ソフトで分析、グラフ化 パソコン経済学。②演繹的アプローチ モデル分析、計算による解析 実データで実証分析
- 全労働時間から無駄時間を差し引く → 生産関数の労働投入量弾力性値を推計する → 無駄時間のない労働投入量から得られる生産量を計算する → この値と現実の生産量との差が、無駄時間がもたらす損失分となる。
- 金利政策:金融引き締めは景気抑制効果があるが、金融緩和の効果は不確実(バブルになったり効果がなかったり)
- 素材原料と最終財の価格変化の違い:素材原料の価格変化は激しい。最終財は、価格変化は小さく、かつ素材原料の価格変化に対して時間遅れがある。
- 成長戦略では、どの産業分野が有望かを議論するのではなく、経済活動の土台となる制度や金融などの環境整備に徹するべき。
- 経済成長: 成長は人的資本の蓄積向上に基づくべき。偶然の産物である天然資源や地政学的要因に依存した成長は長続きしない。技術・技能・知識等の人的資本の内部蓄積化が必要。
- 所得が一定水準に達するまでは、所得と幸福度は正の相関がある。
- GDPの三面等価の原則:支出側統計=生産側統計=所得側統計
- 日本での実際のGDPの計算:支出側推計(消費、投資、政府支出等の最終需要)と、生産側推計(生産額-中間投入額)は別々に計算し、差分は「不突合」として処理。生産側推計から所得側推計を作成するので、両者は常に一致する。
- 産業政策の3つの要素:①成長分野の育成・研究開発(環境、IT、医療)、②規制緩和と競争政策(参入障壁除去、低生産性企業の退出、高生産性企業への資本・労働移動)、③人的資本の拡充(高等教育、成長分野適応訓練)
- 設備の純増分=設備投資-減価償却費
- 「生活満足度」と 「1人当たりの名目GDP」には、ゆるやかな正の相関がある。「心の豊かさ」と「経済的豊かさ」には、ゆるやかな正の相関がある。
- 「経済成長率(リターン)」と「経済成長率の変動率(リスク)」との関係:経済成長率の変動が少ないほど、経済成長率が高くなるとの研究がある。
- 政府による保護が手厚い産業ほど生産性も成長率も低い。
- 所得分布曲線の変化が需要曲線に与える影響:所得が一定水準を超えると消費が大きく増える。消費関数の非線形性。所得分布で最多層の層の所得が一定以上となると、消費が拡大する。
- 複雑な現実経済に対しては、単純化したモデルと分析手法が、結果的に分析力と応用力に富んでいる。→サミュエルソンの新古典派経済学
- 潜在成長率=インフレやデフレにならず達成できる巡航速度
- 良い物価上昇:国内需要増大(需要側要因)、悪い物価上昇:原材料等の輸入品の価格上昇(供給側要因)
- 良い金利上昇と悪い金利上昇
- 経済成長には、無形資産投資(研究開発、組織改編、労働者の教育・訓練)が重要。
- 人的資本:労働者を、投資(教育・訓練)によって生産能力を高めることができる機械設備同様の資本と考える。企業と個人の長期的関係や年功賃金に肯定的。
- 国民総所得(GNI)=GDP+交易損益+海外所得:交易損益=輸出物価上昇分-輸入物価上昇分、海外所得=利子配当収入-利子配当支払い
- 公定歩合貸し出しより公開市場操作がよい理由:効率的で、いったん供給した資金を吸収しやすい。資金を取り入れるかどうかの判断を金融機関側の自主性に委ねることができる。
- 短期景気循環:在庫投資循環 3~4年周期。中期景気循環:設備投資循環 10年周期。長期景気循環:建設投資循環、20年周期。長期景気循環:社会資本投資循環、50年周期。
- 現代の貿易は、比較優位ではなく、規模の経済で説明できること。世界貿易も独占的競争下にある。クルーグマンは簡単な数理モデルで解析。
- 都市部で見られる経済活動の集積は、新たな付加価値を生み出す。
- 生産性の低い資本が、生産性の高い資本に取って替わられることで、イノベーションは進展する。
- 同じ世代に属する個人の間で生涯所得の再分配がどの程度行われているかが重要。
- 所得分布の形状の時間的変化:平均値の時間的変化、分散の時間的変化、絶対値水準が重要
- 公平性と効率性のバランス:経済効率を犠牲にしてでも公平性(格差是正)を優先するか、格差を是認してでも経済効率を優先するか。
- 貿易財と非貿易財の内外価格差、購買力平価
- 中央銀行の仕事:インフレと失業率の安定化。資産価格の高騰は管理対象外。資産に投資する金融機関のリスク管理。金融システムの維持。
- 過剰競争の結果、競争相手の撤退後、需要が上向く曲面を迎えたときに残存者利益を享受できる。
- 経済統計の場合、一般に正規分布を仮定できない。平均値は全体を代表する値ではなく、むしろメジアン(中央値)で見た方がよい。対数正規分布で捉えることもできる。
- 貯蓄-国内投資=財・サービス収支+所得収支
- 製造業は、途上国にとってキャッチアップが容易だ。工場を誘致すればよい。低所得の農業従事者を工場で大量に雇うことで国内市場と無関係に輸出を伸ばし、産業構造の転換、高所得化が可能となる。一方、サービス業は、多様な技能の取得や制度の整備の蓄積は徐々にしか進まず、産業としての発展も生産性の向上も進まない。低賃金のままにおかれる。
- 労働生産性と人的資本投資には相互作用がある。同様に、資本生産性と機械資本投資には相互作用がある。
- 増税で道路などインフラ整備に支出されれば、企業の生産性を高める。教育や健康衛生に支出されれば人的資本の蓄積により労働者の生2産性が高まる。公共投資を全て所得税で賄うモデルで分析した場合、公共投資を増加(所得税も増加)すると経済成長が高まるが、更に増加(所得税も増加)させると逆に成長はマイナスに転じる。公共投資の最適規模の存在を示す。公務員給料や医療保険負担分など政府消費が増えると成長にマイナスとなる。
- 金融緩和の程度は、①ベースマネー/GDP比率と、②M2/ベースマネー比率で見るとよい。日本の場合、90年以降、①ベースマネー/GDP比率は一貫して上昇、②M2/ベースマネー比率は一貫して減少している。
- 長期金利を決定する要素:財政収支、インフレ率、経常収支、政策金利
- 金融政策の効果は、他国の金融政策の影響をうけるため、複数の金融政策の組み合わせから、一つの結果(為替、景気、インフレ)が生まれる。
- 生産年齢人口を非生産年齢人口で割った比率は、その国の成長力、とりわけ住宅価格の推移と正の相関がある。この比率の転換点は、経済成長の転換点、住宅バブルの転換点となる。
- 名目GDP成長率と長期金利(10年物)との関係:名目GDP成長率が長期金利より大きいとバブルになりやすい。名目GDP成長率が長期金利より小さいのが普通の状態。
- 実際の経済現象を簡単な数学モデルで分析