約束事を定義という。定義は証明の対象にはならない。証明はできないが正しいと万人が認めるものを公理という。公理は現実世界の様々な事実・経験を抽象化したものとして、成り立たないと考えるのは不自然であると解釈したものである。定義と公理を組み合わせ(組み合わせ方法も公理である)、導きだしたものを定理という。導きだしたものが多ければ、重要なものを定理として、定理にたどり着く中間成果や定理からの副産物を補題とすることもある。真か偽か分からないが、証明法によって真偽が明らかになるものを命題という。特にAならばBという形で表現できるものを節という。
定義と公理を組み合わせ定理が出来上がり、その定理からまた別の定理を導き出す。定理は絶対に正しい事柄で、定理を生み出すことは数の世界の法則性を発見することである。これを繰り返すことで、数学の世界において法則性が次々と明らかにできる。定理を発見すること、定理を証明することが数学の目的といえる。
「Aである。」と「AであるならばBである。」から「Bである。」を導くように、定義や定理、公理から新しい論理的帰結を導きだすことを演繹という。分かっていることから新しい事実を導くことである。抽象的な真実から具体的な個別事実を導くといえる。一方、帰納は様々な具体的事実を列挙し、そこからその具体的事実が演繹で導出できるような抽象的真実を求めることである。事実の一般化といえる。
「全てのAについてBが成り立つ」の否定は、「あるAについてBが成り立たない」である。「あるAについてBが成り立つ」の否定は「全てのAについてBが成り立たない」である。背理法では、証明したい命題の否定形をつくり、その矛盾を導く。
命題「AであるならばBである。」において、命題の中でBに対してAを十分条件、Aに対してBを必要条件という。意味的には、「Aさえ成立すればBが成立する」のでAは十分な条件、「Aが成立するためにはまずBが成立しなければならない」のでBは必要な条件というところである。A=Bのときは「AはBであるときの必要十分条件」「BはAであるときの必要十分条件」と呼ばれる。
「AならばB」という命題に対して「BならばA」を逆という。「整数ならば実数である。」に対しては「実数ならば整数である。」は逆である。例で分かるとおり、逆は必ずしも真ではない。「AならばB」 という命題に対して「AでないならばBでない。」を裏という。裏も必ずしも真ではない。「AならばB」 という命題に対して「BでないならばAでない」を対偶といい、これは真である。
証明に利用できる手法の代表格に背理法である。ある証明を行うのに、それを否定した命題を考え、前提条件との組み合わせで、演繹推論を行い、いくつか論理的帰結を導きだす。論理的帰結の中に、前提条件と矛盾するものが見つかれば、最初の命題は否定され、その反対である命題が証明されたことになる。AならばBという節の証明には、その対偶が成り立つことを証明すればよい。命題が成り立つことを証明する際に、全ての変数について命題が成り立つことを証明するのは困難な場合が多い。一方、全ての変数で成り立つわけではないことを証明するのは、一つ反例を示すだけでいいので簡単である。また、ある変数で成り立つ、言い換えれば解が存在することを証明するには、一つの解を見つければよい。
解の存在証明には、中間値の定理が使える。f(x1) < 0, f(x2) > 0で f(x)が連続関数であるならば、f(x) = 0となる解xがx1とx2の間に存在する。数学的帰納法は、全ての自然数で命題が成り立つことを証明する技法である。自然数nを含む命題で、①n = 1で成り立つことを証明、②n = kで成り立つと仮定を置き、その仮定を使ってn = k + 1で成り立つことを証明する、この2段階の証明を行えば全ての自然数で命題が成り立つことを証明したことになる。
集合は数学の基本的概念である。現代の数学は集合の考え方を用いて記述することが多い。数の集まりを集合という。例えば、1から5までの整数の集合、負の整数の集合、実数の集合などである。要素の数によって、有限集合と無限集合がある。数学では、数の属性を集合で表現する。自然数同士の足し算では、自然数の集合の要素1つと、同じく自然数の集合の要素1つを加算することと表現される。
集合同士の関係で、集合Aの要素がすべて集合Bの要素であるとき、集合Aは部分集合である。集合Aの要素がすべて集合Bの要素でないとき、集合Aは集合Bの補集合である。集合Aと集合Bにそれぞれ要素が存在するとき、両方に所属する要素は、AまたはBに所属する要素、Aに所属しないがBに所属する要素、Aに所属するがBに所属しない要素、AにもBにも所属しない要素に分類できる。
変数間の関係を示すのが数式である。変数には、実数、整数、負の整数、5以下の自然数などの属性を持つ。変数がどういうもの(属性)であるかを表現するのに集合を用いる。
ある変数とそれに対応する評価値(利益額や費用、望ましさと程度を表す数等)が関数関係にあるとき、変数が動くと評価値はどう動くか、評価値が最大(最小)となる変数の値は何かが注目される。関数の性質を分析し、最適値を導出する手法が多数開発されている。
関数は、ある値を定めると別の値が定まる対応関係をいう。xを定めるとyが定まるときは、y = f(x)である。1対1に対応する場合は、逆関数x = g(y)を考えることができる。多対1の対応の場合などは、逆関数は存在しない。
関数を微分法・積分法で解析すると関数の形が分かったり、最大値(最小値)を見つけることができる。極値(極大値、極小値)の必要条件は、関数の微分がゼロとなることであり、この式から、極値をもたらす変数の値を求められる。
微分可能であれば連続である。逆は真ではない。 連続とは、関数の極限値が関数の値と常に一致することである。関数の極限の定義は、f(x)でxがaに近づくとき、f(x)の値の近づき先のことである。直観的にはこれで分かるが、数学的には以下の記述となる。任意のε > 0に対して、|f(a + h) - b| < ε、|h| < dを満たす正の数d が存在することである。
最適な結果とは何か。もっとも良い結果となることである。良いか悪いかは物差しで測る。関数の最大値か最小値が最も望ましい結果となるように評価関数を定める。例えば、利益額や費用額を関数値とするような関数である。変数を動かし、評価関数が最適値となるような値を見つけ出すことが最適化である。動かす変数を意思決定変数という。
最大値(最小値)を求める評価関数、意思決定変数、制約条件でモデル化する。制約条件は評価関数値が無限になることを防ぐためであるが、実社会では何らかの制約条件が常にあると考えるのは自然であり、制約条件下で意思決定変数を動かし評価関数を最大化する意思決定変数を見つけることが、最適化となる。定式化(モデル化)すれば、例えば、max f(x) subject to g(x) > 0, max f(x,y) subject to g(x,y) > 0 のようになる。
極大値(極小値)の条件は、必要条件が微分してゼロf'(x) = 0である。2階の微分f''(x) > 0ならば極小値、f''(x) < 0なら極大値である。2変数関数f(x,y)の場合は、必要条件が偏微分してゼロfx(x,y) = 0, fy(x,y) = 0である。これは必要条件であって十分条件ではない。変数が複数あるモデルの場合、f(x,y,a,b)では、注目すべき意思決定変数とパラメータ(係数)を区分し、意思決定変数に対して最適化を図る計算を行う。
極大値は局所的な山を表しているだけで、最大値とは限らない。f(x)の引数xが有限の範囲の場合は、全ての範囲を調べればよいが無限の場合は、全域において微分可能な場合を除いて容易でない。全数調査によらず、サンプル調査で最適値に近づく方法には以下のものがある。ニュートン法:これは点Aで微分係数が求められる場合に、その傾きから最適値の候補の周辺を次の探索先とするものである。山登り法:点Aでの微分係数の傾きを基に、登り坂の方に探索の方向をとるものである。ただし、局所的な山に吸い込まれていく可能性がある。
凸集合を定義する。{(x,y)| x = a x1 + (1 - a)x2, y = a y1 + (1 - a)y2, 0 < a < 1}が元の集合に全て含まれるような点(x,y)の集合をいう。凸関数はf(x1)とf(x2)を結んだ線分の点がすべてf(x)より大きい関数である。連続関数の場合、f''(x) > 0が凸関数、f''(x) < 0が凹関数となる。
数理計画法は、意思決定変数が制約条件を満たす前提で、評価関数を最大化(又は最小化)する意思決定変数の値を計算する手法である。制約条件は、意思決定変数を含む不等式になることが多い。例えば生産量が一定量以下と仮定する場合である。評価関数としては、利益や総コストなどである。例えば、x,yの2つの意思決定変数があり、制約条件として2 x + 3 y < 10,5 x + 2 y < 5,x > 0,y > 0とおいたとき、利益7 x + 2 yを最大化するxとyを求める計算である。
最適化のモデルで、評価関数と制約条件がともに線形関数である場合は、最適値の計算が簡単となる。max a x + b y subject to c x + d y < 0 x > 0 y > 0 の場合、制約条件を満たすx,yが一定の範囲ならば最適値が存在する。k = a x + b yとおくと、y = -(a / b)x + (k / b)となる。Y切片が(k / b)なので、xy平面上に制約条件を満たす(x,y)の値をプロットし、傾き-(a / b)となる直線を何本か描く。制約条件を満たす(x,y)と交点がある直線のうち、もっとも切片の大きい直線が最適解を示すことになる。この直線と交わる制約条件を満たす(x,y)の点が最適解であり、このときの評価関数の値がもっとも高い値となる。
制約条件を変化させたとき、評価関数の最大値や最適解がどう変化するかを見るのが感度分析である。max a x + b y subject to c x + d y < 0, x > 0, y > 0 の場合、subject to c x + d y < 1 としたら、制約条件が緩めばその分新しい最適値、評価関数の最大値が見つかる可能性がある。制約条件を緩めることで、それ以上の評価関数の増大が見込めれば、その選択肢は十分検討対象となる。
線形ではない関数式(非線形式)では計算が複雑になる。ラグランジェ乗数法が使用できる。 max f(x,y) subject to g(x,y) = 0 の場合、L = f(x,y) + a g(x,y)を定義し、Lx = 0, Ly = 0, La = 0を満たすxとyが最適解となる。aが感度を表す変数で、g(x,y)を1単位制約を緩めた場合の、評価関数f(x,y)の増分を表す。
ある状態から別のある状態に遷移する際の最適な経路を見つける問題を考える。全体最適な解を見つけることだが、部分最適解を重ね合わせることが全体最適化となる。つまり、全体のことは考えず、局所的にその都度、その時点での最適解を考えればよい。
最適経路を見つけ出す問題を考える。最適経路である必要条件はオイラーの定理と呼ばれ、この必要条件を満たす経路の中で最適なものを選べばよい。最適経路は無限の候補が考えられるが、容易に計算で最適経路が見つかるのは、限られる。容易に計算可能な最適経路は、A地点からB地点への線形経路と2次関数(放物線)経路である。2次関数(放物線)経路は、2タイプあり、初めに大きく動き、次第に動きがゆっくりになるもの、初めはゆっくり動き、次第に動きが大きくなるものである。
問題に対して意思決定を行う際に、元の問題を部分問題に分割して階層化し、個々の部分問題の解を求め、階層構造に従い全体の解を求めていく方法。主観的評価をする場合に有効な方法である。部分項目にそれぞれ主観評価し、全体の整合性を見る。それを階層で組み合わせれば全体の評価となる。
状態Aから状態Bへ遷移した後で状態Bから状態Aに戻る場合、行きと帰りで経路が異なる現象。 x = aからx = bに行くときはf(x)の経路をとるがx = bからx = aに行くときはg(x)の経路をとるような場合。
一般的には以下の形でモデル化できる。状態変数をXとして、 X[t + 1] = f(X[t],Y[t]), Y[t + 1] = f(X[t],Y[t]), Z[t] = g(X[t])となる。YはXに影響を与える変数又は制御変数であり、Zは観測変数である。
基本的、応用範囲が広いモデルは、状態変数Xの変化が、状態変数Xの値に依存するモデルである。 X’= f(X)で、もっとも簡単なのは、Xの値に比例するようなモデル、X' = a Xであり、Xは、X = b ectとなる。一定の比率で増加減少するモデルはこの形で表すことができる。例えば経済現象で一定の成長率で変化する場合はこのモデルで表現できる。